Luminon 5cm f1.6
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo

製造メーカー:小西六
設計者:毛利廣雄(推定)
製造番号:10202
製造年:1942年頃
レンズ構成:5群5枚 エルノスター改良型(推定)
重量:
最小絞り値:なし
絞り枚数:なし
最短距離:なし(バレル)
マウント:なし(アダプターでソニーαマウントに)

Lens Impression

このレンズがどのようなレンズ構成で作られたのかを示す資料は見つかっていない。エルノスター型という説も聞くが、できる限り検証してみたい。

@前群=分解不可。カニ目穴はあるが、固着。
 後群=分解可能。片凹レンズ+緩い曲率の厚くない両凸レンズの1+1構成
A反射面の数
 前群6か所、後群2+2か所
Bガラス曲面の形状
 前群最前面 緩やかな凸形状
 前群最後面 深めの凹形状
 後群1枚目前面 フラットか、ほぼフラットに近い凸面
 後群1枚目後面 やや深い凹面
 後群2枚目前面 緩やかな凸面
 後群2枚目後面 緩やかな凸面
Cレンズサイズ
 前群最前面 30.5mm
 前群最後面 22.2mm
 後群1枚目前面 20.5mm
 後群1枚目後面 ほぼ同サイズ
 後群2枚目前面 18.4mm
 後群2枚目後面 18.4mm

 後群が分解でき、かつ貼り合わせのない、片凹レンズ+緩い厚みの少ない両凸レンズだと判明したこと。加えて前群の反射面が6面あるように観察され、その反射面の動きが光源と同方向3面+逆方向3面であったこと。これらから類推できる構成は、噂の通り、1+1+1/1+1の5群5枚のエルノスター構成の可能性が高いと考えられる。すべて分離型のエルノスター構成は1924年頃には特許申請されているが、4群4枚構成でf2.0のものであった。ルミノンが設計された時点で日本にすでにこのデータはが伝わっていたであろうが、さらにf1.6への拡大を図るために前群にレンズが追加されたものであろう。
 同構成で昭和15年(1940年)11月に小西六株式会社の毛利廣雄によって申請され、昭和17年(1942年)2月に公告された特許150607号におけるレンズ構成にレンズの厚さや曲率に手が加えられたものがそれであると推定した。
 その他にもいくつかのルミノンの存在が知られているが、それらについてはほとんどデータがない。25mmf1.6、75mmf1.6、71mmf2.8、そして50mmf1.4などの実例がある。
 50mmf1.4は、写真工業誌1955年2月号に1954年10月に発表された約10種類の新レンズの一つとして写真入りで紹介されており、X線撮影用の5枚構成ということが判明しているが、詳しいレンズ構成などは不明である。5枚構成ということは、今回のルミノン5cmf1.6と同じエルノスター構成である可能性も考えられるであろう。しかし、いずれも今後の研究対象である。

描写はルミノンの素直で明るい素性が伝わってくる見事なものである。実写の結果、次のような描写の特徴が観察された。@後玉が小さいため、イメージサークルは35mmフルサイズをわずかにカバーせず、周辺がやや欠ける。しかし近接では欠けは消失する。A輪帯部に収差が残された部分が円周上に存在し、中心部・輪帯部・周辺部での描写の差異がユニークな立体感を生み出している。
レンズの素質としてはフルサイズでも十分高性能となるものと考えられるが、そのためには後玉のサイズアップをしなくてはならない。そうすることによってレンズ構成のバランスが崩れ、輪帯部および画面周辺の収差が急激に拡大してしまう可能性はあり得る。


 Photos with Luminon 5cm f1.6
 
2018
Aoyama
(青山)
ルミノンの夜景での性能を試してみた。70年近く前のレンズであり、光源は滲みが見られるが、写し出される建物などは非常にクリアである。周辺部のボケの乱れや減光がなければ、それほど昔の特殊目的レンズとは思えないだろう。
2018
Showa Kinen Park
(昭和記念公園)
周辺部は少しケラれ、その内側もやや暗くなるが、非常に安定した描写を示してくれる。肌の描写もきめ細かいが決して固くない。
周辺部のボケはさすがに少し暴れるが、決して嫌味なものではなく、むしろ立体感を生み出してくれている。
 
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